公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター主催の「第42回住まいのリフォームコンクール」において、自邸の長屋改修「ヨコとタテにつながる長屋~都市に住む~」が入賞しました。応募総数は296作品、その中から32作品が入賞、さらに入賞作品の中から選ばれる上位賞7作品のひとつにも選定いただきました。
これまで10数年にわたり、この町でコツコツと長屋改修に取り組み続け、今回の建物は46戸目の長屋として、自邸をリノベーションしました。このような形で評価をいただきうれしく思います。
当日の表彰式の後の審査委員長の松村秀一先生の講演会では、既存建築ストックが今後50年、100年と生き続ける可能性と、その“建築の健康寿命”を延ばすことへの建築技術者の役割についてお話がありました。その言葉にと共感しつつ、改めて自らの取り組みを見つめ直す機会となりました。
わたしの暮らす昭和町〜田辺界隈には、いまなお“大大阪時代”の近代長屋が数多く残っています。一方、どんどん長屋が解体され姿を消していることも事実です。100年近くこの町を見守ってきた長屋、そして長屋以外にも町には既存ストックがあり余っています。これらの建物の健康寿命を少しでも延ばせるよう、これからも既存ストックの改修設計を軸として活動に励んでいこうと思っています。
※今年のコンクールの審査結果報告はHPをご覧ください。
→https://www.refonet.jp/csm/case/contest_42.html
「タテとヨコにつながるナガヤ~都市に住む~」
→https://www.refonet.jp/csm/case/contest_42_03.html
当方は「住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞」を受賞しました。
国土交通大臣賞には届きませんでしたが、扱い的には3番手かなぁなどと勝手に思っています。
【講評】※リフォームコンクールHPより抜粋
(紙面では書ききれなかったコトをくみ取っていただいています。うれしい。)
大阪・阿倍野区には、約100年前後の良質な近代長屋が多く残っている。時代による街の変化は避けられないが、マンションに代表される現代の都市住居は、人同士、または住居と街の距離を遠ざける傾向にある。隣人や街との近さは長屋の良さでもあり、その文化と歴史を町並みとして残していくことは地域のアイデンティティに繋がっていく。一方で、そのまま使い続けるには耐震性、環境性能、所有権の面での課題がある。今後も町並みを維持していくには、一般の人々にとっても長屋の改修が中古マンションの購入に匹敵する選択肢になっていく必要がある。
本作品は、この地域で長屋の改修に取り組んできた設計者の自邸として、5軒長屋の一戸を改修したものである。門塀で前面道路と区切られた前庭と後庭を持つ築95年の2階建長屋で、9尺の2階外壁後退、1尺5寸の道路後退、1/4の空地、門塀といった当時の町並みルールを継承しながら計画が進められた。
南に面した門塀をくぐり、前庭を抜けて玄関に入ると後庭まで視線が通り、奥行の深さを感じさせる開放的なプランになっている。入ってすぐのリビングは玄関とほぼ同じ高さの小下がりで、その奥のリビングは360mm上がった高さにある。キッチンはまた160mm下げられており、間仕切りがなくても高低差で空間のメリハリがつけられている。
通常、長屋の1階は光が入りにくく、居住性は諦めることが多い。しかし、採光にこだわった工夫が随所に見られ、薄暗さはまったく感じない。最も直射日光が入るのは前面道路に面した南向きの2階窓であるが、玄関上の2階の床レベルを1,100mm上げることでその光が1階奥まで届くようになっている。吹き抜けにするとその分の床面積が減ってしまうが、断熱を強化した小屋裏を有効活用することで、2階の床面積を維持したまま採光を向上させている。また、北側は吹き抜けにし、2階北窓からキッチンまで天空光が届くようになっている。
もう1つの長屋の課題が、壁である。壁を隣家と共有している状態だと、改修時の構造体への影響が避けられない。また、日常生活では音の問題が大きい。界壁が土壁であることから、吸放湿性のある断熱材を用い、一部には石膏ボードを重ね張りすることで防音性能の改善が図られている。将来の切り離しに備えた構造体の追加も行われ、全体的な耐震補強と合わせてIw値が1.17まで改善された。また、断熱性能が省エネ等級5まで向上されたことで、エアコン1台で冷暖房がまかなえるようになった。1階と2階が吹き抜けで繋がり、2階屋根に天窓を付けたことで、垂直方向の通風も促進されるようになった。
